練習後のクールダウンにスタティック・ストレッチ。それが本当にbetterなのか。

こんにちは!トレーナーの猿渡です。

 

今回は、運動後のクールダウンの際にこぞって行われるスタティック・ストレッチングについて、狙った効果とそれに要する時間を考えたとき、本当にそれが最善策であるのか、だったら、チーム練習の限られた時間内において何が一番betterなのか、実際に実践している方法も踏まえて、書いてみました。

 

チームスポーツにおけるクールダウン

クールダウンと言えば、じっくり筋肉を伸ばしていくようなスタティック・ストレッチング(SS)が真っ先に思い浮かぶ人は多いのではないのでしょうか。

SSには関節可動域(ROM)の向上, 筋痛の予防, 筋疲労の回復など(1,2,3)、アスリートにとって、毎日の練習や試合に向けてコンディションを整えていくには必須と言える効果があります。

やっぱり日々の練習後のSSは必要不可欠。誰もがそう思いますし、だからこそこれだけ普及しているわけです。ではこのSS、現場で適切に行えているでしょうか。

まずは時間。これについては周知されていると思いますが、やはり一つの部位30~120秒は必要だと言われています(1,2,3)。

そして強度。SSの効果を最大限に引き出すためには、the point of discomfort(POD)(不快に感じる点)までストレッチする必要があるようです(4)。

duration intensity

チーム事情によっては練習場が使える時間が限られていたり、部活動であれば下校の時間が決められているところもあり、チームとしてクールダウンに当てられる時間はそう多くないのが現実だと思います。そうなると、これだけ長い時間をかけて正しい方法でSSを行うことができているチーム・選手は少なく、どの現場でも、短時間(30秒以下のような)のSSが当たり前になっているのではないでしょうか。

では、実際のところ、短時間のSSにはROMの向上などの効果があるのでしょうか。SSにおける伸張時間の違いが柔軟性に及ぼす影響をみた研究(3)を見てみます。この研究では、SSの伸張時間を6秒間と30秒間の2条件に定め、柔軟性の評価としてSLRをストレッチング前後で測定しています。その結果、伸張時間の違いによって効果が異なることが明らかとなり、30秒間のSSにおいてはROMの有意な向上がみられた一方、6秒間のSSにおいては、実施前後で有意差がみられなかったとしています。

short time ss

比較的最近になっても、やはりSSの方法としては長時間(約30~120秒)行うことが推奨されていて(1)、逆に短時間のSSでは、狙った効果が十分に得られない可能性があると考えられます。(短時間(特に30秒以下)のSSについては、現段階では良質な論文が少ないのが現状で、今後も検討の必要がある(3)と言われています。)

こんな情報を頭に入れつつ考えてみると、やはり時間が取れないからと言ってSSを短時間でバンバンやっちゃえ!というのはナンセンスに思えます(大きなマイナスはないかもしれないが、プラスも見込めない。)。だからと言って、1つの部位に対して1分も2分もかけて、莫大な時間を使うわけにもいかない…。

マイナスがないなら、とりあえずやっておくことにしてもいいんじゃないか… 確かにそれでもいいかもしれませんが、せっかく時間もらってやるなら、今よりもbetterな方法を探したい…

 

スタティック・ストレッチング vs. フォーム・ローリング

なるべく時間をかけずに、なおかつ効果が期待できるクールダウン…

question

ここで登場するのが、フォーム・ローリング(フォーム・ローラー)(FR)です

FRを用いた筋腱への適度な圧迫と軽擦は、血行の促進、筋腱周辺組織の伸張性や滑走性の向上に効果があり、関節可動域の向上や筋痛の予防に繋がると言われています(5,6)。これは、推奨される方法でSSを行った場合と同様な効果が得られそうです…

FRに代表されるセルフでの筋膜リリースについてまとめたシステマティックレビュー(6)では、ROM改善に効果があったとする研究の中で、時間については5~120秒強度についてはpain scale のlevel 7まあまあ強い痛みを感じるぐらい…)程度、できる限り体重をかける、などと設定されています。

fr duration intensity

FRの強度については、レビュー(6)の中で、実験試技においてintensityの詳細な指定がなかった研究においては、いずれもFRによるROM向上に効果がなかった、と述べられていることからも、実施者は意識的に、ある程度痛みが伴うぐらいの強さでFRを行う必要があることが考えられます(腸脛靭帯をやるときは確かに相当痛い…)。これについては、SSでPODまでやらなければ十分な効果が得られないことと同様に、強度について何も考えずに何となくやるのでは意味がない、ということが言えると思います。

ここで更に注目したいのは、FRの継続時間について。SSについては、ROM向上に効果があるとされるのは少なくとも約30~120秒で、それよりも短時間の場合効果が得られない可能性がある(3)と先に述べましたが、FRの場合、5秒という短時間においてもROM向上に効果が得られたとする研究結果(7)がありました。30秒以下の継続時間でFRの効果を検討したものはSSと同様に数少なく、見つけられたものの中ではこの文献だけでしたが、参考にしてみる価値はあると思います…。

FRの継続時間とROM向上の効果に関しては、量-反応関係がある(6,7)と推察されていますが、少し乱暴な言い方をすれば、SSは短い時間でやってもROM向上には意味がないとされる一方、FRでは短い時間でもやればやっただけ効果は得られる、ということです。

ここで、本題の「なるべく時間をかけずに、なおかつ効果が期待できるクールダウン」ということを考えてみると、チーム練習内でクールダウンに使える時間が限られているとすれば、短時間では効果が現れにくいとされるSSを行うよりも、同じ短時間でも効果が期待できる可能性のあるFRを行う方が良いと思いませんか?

ss vs fr

という事を踏まえて、所属するチームにおいては、クールダウンとしてFRを1部位10~20秒で行っています(部位変更の時間も含めて)。部位は下肢の6部位を左右、体幹部を2部位行っていますので、所要時間は約5分ほどです。強度はなるべく体重をかけて行うようにしてもらい、極力同一の強度、効果が得られるようにしています。この強度については、正直統一が難しいですが、実施する際は自分も一緒になって、痛そうな顔をしながら行って、「このぐらいになるまでやってね」ということを身体で伝えているつもりです…笑

 

フォーム・ローリング後のスタティック・ストレッチング…

練習後には、余裕があれば自主練の時間が取られることが多いです。その時間を使ってシューティングをする選手や、補強のトレーニングをする選手など、各々自由にその時間を使っていますが、この時間で自分でもう一度時間をかけてストレッチング(SS)をしたり、パートナーストレッチングをする選手も多くいます。

そこで、SSを行う選手は、FRを行った後に程なくしてSSを行っていることになりますが、FRを行った後にSSを行うと、それぞれ単体で行った時と比べて効果は違ってくるのでしょうか…。

これを調べた研究(8,9)を見てみます。3つの異なるTreatment(①SS, ②FR, ③FR+SS)が足関節の背屈可動域に与える即時効果を調べた研究(8)では、いずれのTreatmentにおいてもROM向上がみられ、この効果においてFRのみ行った場合に比べて、FRの後にSSを行った場合(FR+SS)の方が効果が大きい傾向があったとしています。

この実験の結果としては、FRのみよりもFR+SSの方が優れている傾向が現れましたが、あくまで傾向に留まっています。著者は被験者のプロフィール(年齢、運動習慣・Training経験、FRの使用に慣れていること、など)が結果に影響した可能性があるとも推察していますが、現段階では、実施後の即時効果においてはFR+SSが優れているとハッキリとは言えなさそう(もちろんマイナスはない)。

実際、Treatmentを行った際の即時的な効果も大切ですが、チームでもクールダウンはほぼ毎日行っている事ですので、その積み重ねによる長期的な効果にも焦点を当てておきたいところ。

そこでもう一つの研究(9)では、6回の介入(Treatment:①SS, ②FR, ③FR+SS, ④CON.)をそれぞれ最低48時間の間隔をあけて実施し、その介入前後(1回目の前と6回目の後)で股関節屈曲可動域(SLR)を測定するという、上の研究と比較するとより長期的な介入による効果を調べています。

この結果では、すべてのTreatmentにおいて、介入前後で有意なROM向上がみられ、中でもFR+SSは他のすべてのTreatment(①SS, ②FR, ④CON.)と比べて有意にROMが向上したとしています。これらの結果は、FRの実施によって筋・周辺組織の温度上昇や血流の増加、諸組織の粘性低下などが起こり、これの後に実施するSSの効果が高まったためであると推測されており、加えて、単純に2つのTreatmentを行うことで、Treatmentの総量が増加し、効果が大きくなる可能性がある(SSにもFRにも量-反応関係がある)ことも言及されています(8,9)。

プロトコルをみると、これらの実験ではSSとFRともに90秒~180秒の継続時間で行っていますが、これまでに書いてきたように、実際にはこれほど長い時間を取ることは難しいです。確かにSSに関しては、現段階では長い時間をかけないと確実な効果が得られない(1,2,3)と言えますが、一方で、FRは短時間でもある程度の効果が期待できる(7)と言われています。

となれば、FRは限りある時間内で行い(長くできるなら長い方が良い)、そのあと自分の時間を使ってSSをゆっくりと行うことで、長期的にみて、FRのみを行うよりもROM改善の効果が高い、と言えるでしょう。

FR+SS

ということで、せっかくFRをクールダウンで行っているのですから、練習終わりに時間があるならば、自分で時間をかけてSSをやった方が良いですよ、と指導したいところですね。

やはり、より大きな効果出したり結果を求めたりするのであれば、それだけ多くの時間を費やさなければいけない、ということですね。今回取り上げたFRについても、「限られた時間で」「できるだけ効果を」と考えた場合には有効な方法ではありますが、ただ短時間やればそれでいい、という訳ではありません。時間があるなら長くやった方が良いですし、やり方も何も気にせずにやっていては十分な効果は得られません。これについてはSSでも全く同じです。

自分の時間を作って、いかに自分の身体と向き合えるか。とても大事なことだと思います…。

 

まとめ

チームとしてクールダウンに当てられる時間はそう多くはない→→→

 

限られた時間内でのクールダウン

・短時間のスタティック・ストレッチングでは効果が得られない可能性が高い。

・フォーム・ローリングであれば短時間でも効果が得られる可能性がある。

フォーム・ローリングの効果

・関節可動域の改善、筋痛の予防、疲労の軽減など、即時的~長期的な効果あり。

フォーム・ローリング+スタティック・ストレッチング

・フォーム・ローリングを行った後にスタティック・ストレッチングを行うことで、長期的に、関節可動域の改善に対してより大きな効果が得られる可能性がある。

ストレッチングの方法・強度を考える

・スタティック・ストレッチングとフォーム・ローリングの両方において、適切な強度で行わなければ実施時間に関わらず十分な効果は得られない。

 

→→→限られた時間内ではフォーム・ローリングを行うことが推奨される。実施後に自分で時間を作れるのであればスタティック・ストレッチングを行うと、より大きな効果が得られる。

 


1)D.M. Medeiros, A. Cini, et al:Influence of static stretching on hamstring flexibility in healthy young adults: Systematic review and meta-analysis. Physiotherapy theory and practice, 2016;32:438-445

2)中村 雅俊, 池添 冬芽, 他:スタティックストレッチングが腓腹筋筋腱複合体の筋力及びスティフネスに及ぼす影響の検討:異なるストレッチング時間と反復回数を用いた検討. 体力科学, 2017;66:163-168

3) 谷澤 真, 飛永 敬志, 他:短時間の静的ストレッチングが柔軟性および筋出力に及ぼす影響. 理学療法-臨床・研究・教育, 2014;21:51-55

4) D.G. Behm, A. Chaouachi:A review of the acute effects of static and dynamic stretching on performance. European journal of physiology, 2011;11:2633-2651

5) G.E.P. Pearcey, D.J. Bradbury-Squires, et al:Foam rolling for Delayed-onset muscle soreness and recovery of dynamic performance measures. Journal of athletic training, 2015;50:5-13

6) B. Chris, J. Skarabot:Effect of Self-Myofascial Release: A Systematic Review. Journal of Bodywork & Movement Therapies, 2015;19:747-758

7) K.M. Sullivan, D.B.J. Silvey, et al:Roller-Massager apprication to the hanmstrings increases sit-and-reach range of motion within five to ten seconds without performance impairments. The international journal of sports physical therapy, 2013;8(3):228-236

8) J.Skarabot, C.Beardsley, et al:Comparing the effects of self-myofacial rerease with static stretching on ankle range-of-motion in adolescent athletes. The international journal of sports physical therapy, 2015;10(2):203-212

9) A.R. Mohr, B.C. Long, et al:Effect of foam rolling and static stretching on passive hip-flexion range of motion. Journal of Sport Rehabilitation, 2014;23:296-299


 

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  1. #4 運動前のスタティック・ストレッチは悪なのか。 – Get on to the DREAM

    […] 一方、SSの本来の目的でもある、関節可動域(ROM)を向上させるという効果を引き出すためには、前回のブログ(#3 練習後のクールダウンにスタティック・ストレッチ。それが本当にbette…)にも書いたように、30~120秒以上の持続時間、そしてPODまでの強度で行う必要があります。 […]

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  2. 運動前のスタティック・ストレッチは悪なのか。 – Get on to the DREAM

    […] 一方、SSの本来の目的でもある、関節可動域(ROM)を向上させるという効果を引き出すためには、前回のブログ(#3 練習後のクールダウンにスタティック・ストレッチ。それが本当にbette…)にも書いたように、30~120秒以上の持続時間、そしてPODまでの強度で行う必要があります。 […]

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