選手に、偉いも偉くないもない。

「事件に大きいも小さいもない。」
このセリフを思い出さずにはいられなかった話です。
『NBAのトレーナーたちは、ステフやハーデンのようなスタープレイヤーのトリートメントを最優先にする。ベンチで座って試合に出ていない選手は二の次にするのが当たり前だ。』
ある選手から言われた言葉です。
これが本当なら、そういう風潮が本当にあるなら、私はNBAになんかもう憧れない。

自分の身体のケアもプロとしての仕事の一つ。
練習や試合と同じように、自身の身体のケアをすることは、プロ選手としての仕事です。
自分自身でやるのか、トレーナーや治療家の手を借りてやるのか、どちらにせよ自分の時間を割いてでも、やるべき仕事のひとつです。
ほとんどのチームでは、日々の練習の前後にはトリートメントの時間が多かれ少なかれ設けられ、必要な選手はその時間に我々のもとにやって来ます。
このトリートメントの時間は、際限なく設けられているわけではなく、練習の前なら「練習開始の何分前まで」、練習のあとなら「1人につき何分間」など、時間が決められていたり、予約制であることがほとんどかと思います。
チーム内の選手数やトレーナーの人数にも寄ると思いますが、1人に割く時間を多くとりすぎることは、その他の選手の時間を奪うことになりますから、良いことではありません。
どのチームにもある程度の限界や制限があり、その環境の中で我々は最大のパフォーマンスをしなければならないし、選手にもチームによって制限があることは理解してもらわなくてはなりません。
勝つために必要なこと
プロチームに所属する人間であれば、「勝つために必要なことをする」ということが仕事の全てになるはずです。
そもそもプロであればそこに所属する選手・スタッフの全員が、「勝つために必要」な存在であるから、価値を与えられ、金をもらっているわけです。
本当に「勝つために必要のない」選手であれば、すぐさま上がクビにするはずです。(そうであるべきです。)
ですから、試合に出ている、出ていない関係なく、今目の前にいる選手全員が、「勝つために必要」であることは間違いなく、決められた時間の中では、その選手全員を平等に扱うことは当然だと思います。
決められたルール(設けられたトリートメントの時間)の中では、「あなたはいっぱい試合に出てるから長めね」、「あなたは全然試合でないから短めね」などといったことは決してありません。
我々にとっては、目の前にいる選手が、スターだろうがベンチメンバーだろうがそんなのは関係ありません。
チームにいる選手は、全員「勝つために必要な選手」のはずですから、誰に対するトリートメントであってもそれは「勝つために必要なこと」に変わりありません。
決められた時間の中で、自分だけ特別扱いをしてもらうことは、自分の時間を犠牲にしているのではなく、他の選手・チームの時間を犠牲にしているだけです。
もし我々が、誰かひとりを特別扱いするとすれば、その他の数多くの選手を犠牲にすることになり、結果、一人のために行った必要なことは、「勝つために必要なこと」ではなくなります。これは我々がするべきことではありません。
他の人よりも時間が必要なら、もっと早く来ればいい。他が終わるまで待てばいい。他の何かを犠牲にして、自分で時間を作ればいい。
結局、トップでも長年活躍できる選手は、こういう選手だと思います。
試合に出てるから偉いとか、出てないから偉くないとか、そもそもそんなこと言ってる時点でお門違いです。
偉い、偉くない、で評価したいのなら、「どれだけ自分の時間を犠牲にできているか」でしょう。(それもプロであれば当たり前と思いたいが。)
自分の時間を犠牲にする。
冒頭挙げたNBAのスタープレイヤーたち、周りから一目置かれるような選手は、どれだけの時間を犠牲にして強くなってきただろうか。
どれだけ長い時間ジムにいて、どれだけ長い時間ウェイトルームにいて、どれだけ長い時間トリートメントルームにいて、どれだけ長い時間スカウティングビデオを見ているだろうか。
きっとトレーナーたちは決してそいつらを特別扱いしているのではない。そいつらのために「やってあげている」のではない。周りに与えられた時間の枠を超えて、そいつが本当に頑張っているから、そういう姿勢があるから、そいつに多くの時間を割けるんだ。
そいつらの思う「勝つために必要なこと」は、トレーナーにとっても「勝つために必要なこと」であり、時間を犠牲にする価値のあることだ。
自分の時間を犠牲にするつもりのないやつに、私は自分の時間をあげたいとは思わない。我々の仕事は「やってあげる」仕事じゃない。サービス業じゃない。
本当に「勝つために必要なこと」は、用意された時間の中には無いことのほうが多い。
本当の「勝つために必要なこと」は、自分を犠牲にして作った時間の中にある。
選手に、偉いも偉くないもない。
詰まる所、何が言いたいかといえば、
冒頭の選手の言った言葉は間違っている、ということです。
もちろん、NBAという最高峰の舞台ですので、日本とは比べ物にならないスタッフの数がいることは確かです。トリートメントだって予約制にしなくてもいつでも受けられるのかもしれないし、いつ行ったって誰かが対応してくれる、そんな環境が当たり前なのかもしれない。
でも、環境が違ったって、その中のルールは同じです。
そのチームにいる選手全員が「勝つために必要」であるということ。
そして決められた時間、与えられた環境の中では、その全員が平等に扱われて当然だということ。(そもそもその中には「特別扱い」という概念も必要ない。)
与えられた時間の中で、自分だけ特別扱いされることを求めるのは、ただのわがままで、偉いとか、意識高いとか、身体のことよく考えてるとか、そんなんじゃないということ。
本当に「勝つために自分に必要なこと」は、その枠を超えたところにあり、そこに自分の時間を犠牲にしてまで踏み込む勇気がある奴が、すごい奴だ。
「今チームにいる選手に、偉いも偉くないもない」
そういうこと。そもそも。

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