ここに来る前に思い描いていたキャリアには遠く及んでいませんが、それでももがきながら、爪痕を残しながら、目標への道を絶やさないようなんとか生きています…。
1か月目
カナダに来て最初の数週間は、日本の職場で偶然つながったカナダ人の友人が住んでいたHamiltonという町に滞在しました。
カナダに着いてからは、これまで作ってきた現地のチームや人とのコネクションを使い、たくさんの人と会いながら今後の道筋を探っていました。その中で、大学施設でのインターンシップを勧められたこともあり、いくつかの夏季インターンの公募に応募し、Brock UniversityのSport Performance Internshipというプログラムに採用されました。
英語はお世辞にも流暢とは言えなかった私にとっては、インタビュープロセスは苦痛でしかなく、何ら手ごたえも感じられなかったのですが、BrockのS&Cコーチ陣の1人が、同じECUのプログラム出身だったことが、プラスに働いたのではないかと思っています。

2か月目~:インターン
Brock Universityのインターンに採用されたことで、1カ月足らずでHamiltonからSt Catherinesというところ(ナイアガラの滝の近く)に引っ越しをすることになりました。
この夏の期間は、私のプロとしてのキャリアの中でも最も辛い時間となりました。
その大きな要因は、コミュニケーション。流暢ではない英語についてどうこう言ってもしょうがないのですが、私が何よりも辛かったのが、“プロとしての自分”を言語を通じて100%表現できない、ということでした。
もっと効果的な伝え方があるのに、他のコーチが気付いていないようなところ私は見えているのに、咄嗟に声掛けができない、流動的なスポーツの現場でその“流れ”についていけない、プラスαの声掛けができない。
英語を“言い訳に”していると言ったらその通りなのですが、“もっとできるのに、どうしようもできない”という状況が何よりも歯がゆかったです。
しかし、そんな葛藤の中で考えることをやめず、どうにか自分なりの表現の仕方を見つけようともがいていくうちに、自分がこれまで大切にしていたコーチング哲学から“答え”を見つけることができました。
“Lead By Example”。私が一番に動き、熱量を持ち、見せ、振る舞うことで、選手にメッセージを伝えることができるようになった。
これまでも、そのモットーは日本語という言語とともに表現してきましたが、言語というツールが制限される状況だったからこそ、言語表現と非言語表現の比率を変化させ、大事にしてきた哲学を前面に出すことで、選手と“つながる”ことができました。
そのような意味でも、このインターンシップの期間は、辛い思いの中でも、“自分と向き合う”有意義な時間になっていました。そして何よりも、現場知、科学知に優れ、謙虚でプロフェッショナルなコーチ陣に出会えたこと、彼らに高く評価してもらえたことは非常に誇れるものでした。
おそらく今後のキャリアの節目節目で、思い出し、助言を求められるような“メンター”に出会えたことが、一番大きな収穫と言えるかもしれません。
6か月目~:フルタイムジョブ

Brockで高く評価してもらうことができ、Performance Directorから推薦を頂いたことで、いくつかの職場からオファーを頂くことができました。インタビュープロセスを通じて、そのDirectorからの推薦がカナダでどれだけの意味を持つのかを実感し、自分が関わったすべての現場で“爪痕を残す”ことが、どれほど大事なことなのかを痛感しました。
最終的には、就労ビザのサポートの意思など様々な条件を踏まえて、推薦を通さずに得たオファーを受けることになり、Vancouver IslandのNanaimoという町にある“アスリートジム”で働いています。

当初は、もちろん大学やプロなどと契約することが目標でしたが、カナダ人にとっても非常に狭き門であるそれらの職場に1年足らずでたどり着くことはそう簡単ではありませんでした。
私にとって決して理想の職場とは言えませんが、良い意味で“自分のやりたいことを何でもやらせてもらえる”現場ではあるので、自分でインプットしてきたものを試しながら、検証し、また還元できるいい機会になっています。
今では、我々のジムと契約しているチームトレーニングの9割ほどを私が請け負うようになり、機器が限られた中ではありますが、新たにフィジカルテストやモニタリング等のシステムも私が一から構築し、選手、コーチ、保護者へのフィードバックも含め、管理をするようになっています。



上司も含めてコーチ陣は本当にみんな良い人で、過ごしやすい職場でもあります。
ただ、Brock universityで出会えたような“S&Cプロフェッショナル”として尊敬できるコーチは残念ながら一人もいません。
確かに、やりがいや、刺激はインターンのときとは比べ物になりませんが、どんな形態であれプライベートジムでは、基本的には“パーソナルトレーナー”の需要がありますから、予想はできていたことではありました(S&Cコーチとパーソナルトレーナーは全く別モノであるとつくづく感じる)。
実際、Scientificなことをディスカッションできるコーチは、私と同じ時期に入った1人しかいません。彼は私と同様に、この先は大学やプロで働きたいという志を持っています。彼も言っていましたが、北米においてプライベートビジネスは、Team Settingを目指すS&Cコーチにとっては“踏み台”のような現場になっているのだと感じます。
私たちにとっては、ここで自分のキャパシティを広げ、経験値を積み、次の現場につなげる”貯金”の時期と捉えています。
“ワーホリ”中の私
自分でも時々忘れることがありましたが、私はカナダに“ワーホリビザ”で来ています。
一年というワーホリ期間中に自分の希望する職種で、しかも時給ではなくサラリー制(月給)でフルタイムの仕事をゲットできた訳ですが、ワーホリ勢にとってはかなりのレアケースだと思います。
実を言うと、カナダに来て半年ほどの時点で、「ORワーホリビザ」というもう一つのワーホリビザを取得し、当初一年だったビザの期間を、もう一年延長していました(正確には延長とは言わないですが)。なので、最初のワーホリビザの期限が切れる3月末から、もう一年はカナダに留まることができます。
このいわゆる“セカンドワーホリ”を取得した理由は、就職活動がきっかけでした。
仮に、こちらの大学や大学院を卒業すれば、その後2~3年の就労ビザを取得することができるので、カナダで専門職での就職を考えているのであれば、就業から就労というプロセスがいわば“正攻法”だと言われています。その“ポスグラ(post-graduate)”期間で就職先を見つけ、その間に新たに就労ビザを申請するか、あるいは一年以上の職歴をつけて永住権を申請するかという道がよく取られています。
一方、ワーホリから専門職への就職を考えると、タイムフレームが圧倒的に短く、就活自体に割ける時間も然り、就職してから能力を証明しビザのサポートをしてもらうまでの時間然り、とにかく短い期間で行わなければなりません。幸運にも私は、これまでのキャリと推薦のお陰もあり就活はスムーズにいったのですが、インターン期間で就労せずに半年を消化してしまっていたので、正直そこから就労ビザそして永住権を…というのは厳しい話でした。
そんな状況もありながら、実際の就活においても、ビザの期限が短いということはネガティブ要素でしかなく、ワーホリという言葉自体がマイナスに働くこともありました。
というわけで、就活の際に「丸一年以上ビザの期限があります。その期間内で私の能力を証明できますので、そしたら就労ビザのサポートをしてください。」と言うために(高い金を払って)ビザの延長をしました。
結局今では、職場からは就労ビザは勧んでサポートすると言われており、私が頼めばすぐにビザの申請プロセスに協力してくれる状況にありつくことができ、かなり自分はラッキーだったと感じています。
この先の岐路
しかし現状「それではお願いします」と、就労ビザのサポートを頼むまでには至っていません。
職場に就労ビザをサポートしてもらうとなると、発行されるビザは“Closed Visa”と言って現在の職場でのみ有効なものになります。職歴を稼ぐという意味ではポジティブなことなのですが、既に次のステージも狙っていきたい私にとっては、今の職場に数年“縛られる”ことになるため、どうしてもそこがネックになっています。
就労ビザを取得し一年以上の職歴がつけば永住権の申請もでき、永住権を取得できればビザのステータスは“Open Visa”となるため、職場を限定せずどこでも働くことができます。
ワーホリから永住権につなげる方法においては、このプロセスが一番よく用いられるものですが、永住権申請から取得にかかる時間は非常にまちまちで、長ければ一年近くかかる場合もあると言います。ですから、“可能性は高いが、時間はかかる”選択肢と言えるでしょう。
ここで、私の決断を妨げる要素はいくつかあって、まず自分でも信じられませんが、今年で30歳を迎えるということ。FieldでもAcademicでもそれなりに経験を積んできて、今の職場でも、“環境が整った現場で自分がどれだけのパフォーマンスを発揮できるのか”を確認することができ、今ではどんな現場でもやっていける自信があります。
そんなキャリアでも人生においても節目となるべき時期に、未だに“理想の現場”で働けていない自分を見ることは、時に苦痛です。自分を周りと比べているだけ、あるいはただの焦りなのかもしれないですが、“チャンスがあれば今すぐにでも飛びつける状態を常に作っておきたい”、というのが今の素直な気持ちです。
実際、この職場に就いてからも継続してチームや大学の求人にはApplyし続けていて、いくつかのインタビューも受けることができています。結局採用されるまでには至っていないので言うのは簡単なのですが、何となく“あと一歩のところまで来てる”感覚が無駄に自分の中に芽生えてしまっています。
そんなこともあり、就労ビザの取得によって今の職場に留まらなくてはならない状況は、自分にとって優先すべきことではないのかも、と思ってしまっているのが現状です。

結局は自分次第
自分に時間の余裕を与えれば、ここまで悩むことではないのかもしれませんが、ビザの状況、年齢、キャリア、理想と現実のギャップ…色んなことを考えると、中々ここからどう動くことが最善なのかが見えていない、というのが正直なところです。
精神的にもいっぱいいっぱいな上、将来が見えない不安などが重なって、自分がカナダに来る前に想像していた以上に、いろんな方向からのストレスに揺れ動いている自分に気付きました。それゆえ、当初の目標や長期的なビジョンさえも見失う時期もありました。
しかし、仲間からの助言などもあり、自分のやりたいこと、それをやるためにやらなきゃいけないことをしっかりと頭で考え続けないといけないと、気付かされる最近でもあります。
結局は自分次第なんですよね。自分で決めてここまで来て、幸いにも自分の道を選択できる状況があるだけでも、恵まれていると思わなければなりません。
ここからどうなっていくのか、どういう決断を下すのかは現時点では自分でもわかりません。しっかり考えて、後悔しない、自分で「正しかったんだ」と思えるような選択をしていきたいと思います。