「UP TO YOU」

こんにちは。トレーナーの猿渡です。

 

先日、週末の試合がなかったので久々にセミナーに参加してきました!場所は千葉県の流山にあるNSCAのHuman Performance Center(HPC)。ここで行われるセミナーに参加するのは何度目かになりますが、実家に程近いこともあり、興味深いテーマのときは実家に帰る口実にもなるので、いつも飛びついてしまうのです!

今回も参加してよかったと思えるものでしたし、自分の中の知識をすっきりと整理してくれるようなセミナーでした。

さて、今回はこのセミナーのテーマ自体とは関係のないところになるのですが、講師の方の話の中で印象深かったことについて書いていきたいと思います…

久々のセミナー

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セミナーのテーマは「~オーストラリアのS&C×戦略的リカバリー~」と題して、第一部では講師の笠原先生(国際武道大学体育学科准教授)が実際に在籍されていた、オーストラリア国立スポーツ科学研究所(AIS)におけるアスリートサポートの実際と、オーストラリア全体でみるストレングス&コンディショニングについて、そして第二部では文献レビューを含めた最近のリカバリー戦略の知見と実際の運用について整理していくというような内容でした。

オーストラリアのS&Cについては、自分自身あまり情報を仕入れたことがなかったのでとても新鮮でしたし、戦略的リカバリーについては、関心のあるテーマということもあり、全く知らない情報が手に入った、というようなことはありませんでしたが、頭の中でごちゃごちゃしていたものがうまく整理されたような感覚で、とてもすっきりしました。

セミナーに参加するにあたっては、知らない内容を教わりに行くということだけではなく、知ってる知識について他人の視点でもう一度見つめ直してみたり、繰り返し同じ内容について聞いていくことで知識を整理していくことの中にも、参加する意義があるのではないかと、思います。

もうひとつ感じるのは、セミナーや講習で「人の考えを聞く」ということが、自分にとっていかに有意義かということです。これはセミナーなどに限ったことではありませんが、その人が1つの物事をどう見てどのように考えているのか、その人の考えを聞く事によって、自分(の意見・考え・立場)を再認識することができるとつくづく思います。話を聞いていると、鳥肌が立つぐらい共感したり、逆に、いやぁこれは違うんじゃないの?と思ったり。どちらにせよ自分の考えはこうだから、この人に共感できる部分があるだとか、まったくそうは思わないだとか思えるわけで、自分の考えに反射させて様々な意見を聞くことで、さらに自分の考えに厚みができ、積み上がっていくような感覚になります。

これはさらに、その人がその物事に関してものすごい熱意や信念を持っていたならば、これほど楽しい時間はないんです… 軸がしっかりしていて、一貫した考えがある人の話にはぐぅーっと引き込まれてしまう。 そんな人の話、たくさん聞いていきたいですね…

 

オーストラリアのコーチングにおける「UP TO YOU」の精神

ここからが本題です。

今回のセミナーの第一部の中では、オーストラリアにおいてS&Cコーチに必要だと考えられている能力や人間性、そして選手への指導スタイルや接し方について、講師の笠原先生が実際にAISで在籍されているときに接してきたS&Cコーチたちの姿や、オーストラリアの国風から見たS&Cコーチのスタイルなどを踏まえて、オーストラリアのS&Cの現状に触れながらお話をされていました。

up to you

その中で印象に残ったのが、「UP TO YOU」という言葉です。

オーストラリアの国風というのは、ざっくりいうと自由とか放任とからしく(あの広大な自然が故なのかな…)、教育においては幼少期から自立を促すような方針が取られることが多いそうです。こういったことは、スポーツの指導現場でも同様で、やるかやらないかは本人に任せる、といったスタイルで指導することがほとんどだと言います。要するに、「UP TO YOU=あなた次第」の精神が根付いているのです。

 

もちろん、初っ端から放任で、「勝手にやっといて」ということではなく、必要な説明(それをやることによる利益やリスク、細かい注意点など)などを全部した上で、「やるかやらないかはあなたが決めなさい。」と言ったところだそう。

実際に、講師の先生が見ていた現場においては、やるやつはトコトンやるし、放任に甘えてやらないやつは全然やらない、といった調子だそうです。そして、長期的に見ればやはりちゃんとやっていた選手は優秀な成績を残し、やらなかった選手はある程度まで行って伸び悩むことが多いと言います…当たり前ですね。

 

私はこのようなスタイルはとっても魅力的だと感じました。「UP TO YOU」の精神であれば、良くも悪くも指導者に依存するような選手を作らないことにつながるのかなと思います。いくらやる気があるように見えても、見てなきゃやらない選手だって大勢います。もっと悪ければ、言わなきゃやらないし、言ったこともできない選手もいます。そもそも、「言われたことだけ、その場だけやればいいや」と思っているような選手は、処方されたメニューが「自分のため」であることを理解できていないんだと思います(そのメニュー自体が本当に無意味なものであれば別ですが。)。

 

パーソナルでトレーニングを見ているのであれば、ある程度依存するような形でも仕方ないとは思いますが、チームスポーツにおいては、一人に割ける時間も、指導回数も自ずと少なくなってしまうのは当然のことです。その数少ない指導の中で、どれだけ為になることを吸収し、取り入れられるかは、その選手の気持ち次第だと思います。分からなければその場で質問をぶつければいいし、気に入らないならまず全力でやってみて、それでもだめなら全力でぶつかればいい。勝つために必要だと思ったならやればいいし、そんなことどうでもいいならやらなければいい。その代わり、都合の良い時だけ依存するんじゃねぇぞってことです。

 

こう言うと、仕事を放棄しているように見えるかもしれませんが、そうではありません。確かに、「UP TO YOU」と言いながら、こちらがちゃんと指導できていなかったり、知識や技術の引き出しを備えていないのであれば、こちらに非があります。しかし、こちらがやることしっかりやって、選手がやらないのであれば、それは選手が悪い。指導者と選手の間には立場の差はないです。私たちもやることやって、選手たちもやることやる。それだけでいいし、プロであればそれが仕事です。

 

指導は必要な分だけでいい。それ以上でも以下でもありません。必要以上に、面倒を見てあげるようなことはしなくていい。それをやっていたらきっと、「やってあげる」というサービスの精神に繋がってしまいます。あくまでも私たちは一緒に戦っているのであり、選手に何かをしてあげる立場ではありません。その代わりに、必要なことは、しっかり、やる。

success failure

きっと、競技レベルが高まれば高まるほど、必要なことは増えていくだろうし、それは指導側も選手も同じだと思います。そんなときに、今向かい合っているものをやるのかやらないのか、自分のためだと思ってできるのかできないのか、そんな選択を繰り返すことになるんだと思います。この人はこうだった、とか、あの人にこう言われた、とかじゃなく、結局はそれをどう見てどうするのかは「自分次第」ということです。

「UP TO YOU」の指導スタイルで貫くには、自分自身にも覚悟が必要です。極端に言えば、「自分が言ったことだけ全てしっかりやっていれば勝てる」ということですから。だからそれ以外に必要なことはないし、他に言う必要もない、とまで言えなきゃいけない(実際は指導者の一方的な要因だけで片付けられるものではありませんが…)。残念ながら今の段階ではここまで振りきれたことは言えません。しかし、目指さなきゃいけないのはここだと思っています。

 

 


セミナーに行くと、今回のように講師の方が何気なく言った言葉が深く刺さってしまうことが多々あります…。 こうなってしまうと本来の内容よりも、グサッときた言葉について考えを巡らせてしまい、内容があまり入ってこなくなることも…(ちゃんと聞いてはいます、メモも取ってます…)

悪い言い方をすれば、自分に都合の良い言葉が心に響いているだけなのかもしれませんが、それもまた大切なことなのかと…。やっぱり人の話を聞いて、自分を再認識することは、すごく大事なことだと思います。


 

1 comment

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  1. 「哲学っぽさ」を求めて① – Get on to your DREAM

    […] 前にあげたブログ(「UP TO YOU」)の冒頭でも書いたように、自分の得意分野や本当に好きなことを議題にしている人のセミナーを聞くときは(大規模なカンファレンスなどではなく、クローズな勉強会や講習会で多い気がする…)、論じている内容そのものはもちろんだが、その話し方や、溢れんばかりの情熱に刺激を受けてしまうことの方が多く、細かい言葉選びからも、「その人が大切にしていること」がはっきりと見とれることがあり、これこそが私が求めていることなのかもしれない、と思ってしまう。 […]

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